忌引きは何日必要？続柄ごとの相場と社会的マナー解説

大切な人を亡くした際に取得する忌引き休暇について、「何日休めるのか」「どのような手続きが必要なのか」と悩む方は少なくありません。忌引き休暇の日数は、亡くなった方との続柄によって大きく異なり、配偶者なら10日、実父母なら7日が一般的な相場とされています。

本記事では、続柄別の忌引き日数の目安から、会社への連絡方法、休暇中の過ごし方まで、忌引き休暇に関する基本的な知識と社会的マナーを詳しく解説します。突然の訃報に慌てることなく、適切に対応できるよう実践的な情報をお伝えします。

忌引き休暇とは

忌引き休暇は、家族や親族が亡くなった際に葬儀への参列や各種手続きのために取得する特別な休暇制度です。有給休暇とは異なり、多くの企業では慶弔休暇として別途定められています。

忌引き休暇の基本的な仕組み

忌引き休暇は労働基準法で義務付けられた制度ではありませんが、多くの企業が就業規則で定めています。休暇の日数は会社によって異なりますが、一般的には亡くなった方との続柄や親等によって決められます。

親等とは家族関係の遠近を表す単位で、配偶者は0親等、実父母・実子は1親等、祖父母・兄弟姉妹は2親等、叔父叔母・甥姪は3親等となります。親等が近いほど忌引き日数も多く設定されるのが一般的です。

有給休暇との違い

忌引き休暇と有給休暇の主な違いは、取得理由と事前申請の必要性です。有給休暇は労働者の権利として自由に取得できる一方、忌引き休暇は慶弔事由に限定されます。

また、忌引き休暇は突発的な事由のため事前申請が困難ですが、有給休暇は原則として事前申請が必要です。給与の支払いについては、忌引き休暇を有給扱いとするか無給扱いとするかは会社の規定によって異なります。

親等による忌引き日数の決まり方

忌引き日数は親等という家族関係の距離によって決められることが多く、その仕組みを理解することで適切な日数を把握できます。

親等の数え方と基本ルール

親等は自分を基準として家族関係の距離を数える単位です。配偶者は0親等とされ、そこから上下・左右に1世代ずつ数えていきます。

1親等には実父母・実子・養父母・養子が含まれ、2親等には祖父母・兄弟姉妹・孫が含まれます。3親等になると曾祖父母・叔父叔母・甥姪が該当し、4親等では従兄弟姉妹やひ孫が含まれます。

親等が近いほど忌引き日数が多く設定されるのが一般的で、これは家族関係の密接さと葬儀における役割の重要性を反映しています。

実家側と配偶者側の日数差

同じ親等でも、実家側（血族）と配偶者側（姻族）では忌引き日数に差が設けられることが多くなっています。これは血縁関係の有無による違いを考慮したものです。

例えば、実家の祖父母は3日、配偶者の祖父母は1日といった具合に、実家側の方が長い日数が設定されています。ただし、配偶者の父母（義理の両親）については、実家の祖父母と同等の3日程度が設定されることが多くなっています。

地域や業界による違い

親等による忌引き日数の設定は、地域や業界によっても違いがあります。関西地方では親族関係を重視する傾向があり、やや長めの日数設定をする企業もあります。

また、伝統的な業界や家族経営の企業では、より手厚い忌引き制度を設けている場合があります。逆に、外資系企業やベンチャー企業では、最低限の日数設定となっているケースも見られます。

続柄別の忌引き日数相場一覧

忌引き休暇の日数は、亡くなった方との続柄によって大きく異なります。以下では、一般的な企業における続柄別の忌引き日数相場の目安をご紹介します。

配偶者・直系親族（1親等）の忌引き日数

最も身近な家族である配偶者や直系親族の場合、忌引き日数は比較的長く設定されています。

続柄	忌引き日数の目安	備考
配偶者	10日	最も長い日数設定
実父母	7日	喪主の場合は延長される場合も
子（実子・養子）	5日	年齢問わず同じ日数

配偶者の場合は10日間が相場となっており、これは夫婦が法的に最も近い関係にあることを反映しています。実父母については7日間が基本ですが、喪主となる場合は準備や手続きの負担を考慮して10日程度に延長されるケースもあります。

2親等親族の忌引き日数

祖父母や兄弟姉妹といった2親等の親族については、実家側と配偶者側で日数に差が設けられることが多くなっています。

続柄	忌引き日数の目安	備考
祖父母（実家側）	3日	同居・別居問わず
兄弟姉妹（実家側）	3日	年上・年下問わず
配偶者の父母	3日	義理の両親
配偶者の祖父母	1日	実家側より短い設定
配偶者の兄弟姉妹	1日	義理の兄弟姉妹

同じ2親等でも、実家側の祖父母・兄弟姉妹は3日、配偶者側の祖父母・兄弟姉妹は1日と差が設けられているのが一般的です。これは血縁関係の違いを考慮した設定となっています。

3親等以遠の親族の忌引き日数

3親等以遠の親族については、忌引き休暇が認められない場合も多く、認められても1日程度が相場となっています。

孫：1日（会社によっては認められない場合も）
曾祖父母：0〜1日
叔父叔母：0〜1日
甥・姪：0〜1日
従兄弟・従姉妹：原則として対象外

3親等以遠の場合は会社の就業規則によって大きく異なるため、事前に確認しておくことが重要です。特に甥・姪については、認められない企業も少なくありません。

配偶者・直系親族の忌引き休暇詳細

配偶者や直系親族（実父母・実子）が亡くなった場合の忌引き休暇について、具体的な日数や取得時の注意点を詳しく解説します。

配偶者の忌引き休暇（10日間）

配偶者が亡くなった場合、多くの企業で10日間の忌引き休暇が認められています。これは法律婚だけでなく、事実婚や内縁関係の場合も同様に扱われることが多くなっています。

配偶者の忌引き休暇が最も長く設定される理由は、残された配偶者が喪主となる可能性が高く、葬儀の準備から各種手続きまで多くの負担を負うためです。通夜・葬儀だけでなく、保険や年金の手続き、相続に関する準備なども含めた日数設定となっています。

また、精神的な負担も大きいため、職場復帰に向けた心の整理をする時間も考慮されています。企業によっては、さらに長い休暇や段階的な復帰制度を設けているところもあります。

実父母の忌引き休暇（7日間）

実父母が亡くなった場合の忌引き休暇は7日間が相場となっています。ただし、跡取りとして喪主を務める場合や、葬儀の準備を主導する立場にある場合は、10日程度まで延長されることもあります。

実父母の場合、地理的な距離も忌引き日数に影響することがあります。遠方に住んでいる場合は移動時間を考慮して追加の日数が認められる場合もあります。

また、両親が高齢で介護が必要だった場合や、家業を継ぐ必要がある場合など、特別な事情がある場合は個別に相談することが可能です。

実子の忌引き休暇（5日間）

実子（養子含む）が亡くなった場合の忌引き休暇は5日間が一般的です。子の年齢に関係なく、同じ日数が適用されることが多くなっています。

子を亡くした場合の精神的負担は計り知れないため、必要に応じて有給休暇の併用や、段階的な職場復帰を検討することも重要です。会社の産業医や相談窓口を活用して、復帰に向けたサポートを受けることも可能です。

2親等・3親等親族の忌引き対応

2親等や3親等の親族が亡くなった場合の忌引き休暇について、具体的な日数や注意すべきポイントを説明します。

祖父母・兄弟姉妹（2親等）の忌引き休暇

祖父母や兄弟姉妹といった2親等の親族の場合、実家側は3日、配偶者側は1日が一般的な設定となっています。同居の有無や関係の深さに関わらず、血縁関係で日数が決められることが多くなっています。

兄弟姉妹の場合、年齢差や結婚後の関係性によって実際の親密度は異なりますが、忌引き日数は一律に設定されることが一般的です。ただし、同居している場合や介護を担っていた場合などは、特別な配慮が検討される場合もあります。

祖父母の忌引き休暇は、育ててもらった恩や関係の深さに関わらず一律の日数となることが多いため、必要に応じて有給休暇の併用を検討することが重要です。

叔父叔母・甥姪（3親等）の忌引き休暇

3親等の親族である叔父叔母や甥姪の場合、忌引き休暇が認められない企業も多く、認められても1日程度が相場となっています。特に甥姪については、対象外とする企業が多くなっています。

叔父叔母が亡くなった場合でも、育ての親のような関係だった場合や、家業を手伝っていた場合など、特別な事情があれば個別に相談することが可能です。ただし、会社の規定が優先されるため、有給休暇での対応を求められることもあります。

3親等の親族の場合、葬儀への参列は可能でも、長期間の休暇は取得しづらいのが現状です半日休暇や時間単位での有給休暇を活用することを検討しましょう。

配偶者側親族への対応

配偶者側の親族（義理の関係）については、同じ親等でも実家側より短い日数設定となることが一般的です。義理の両親は3日、義理の祖父母・兄弟姉妹は1日程度が相場となっています。

配偶者側の親族の葬儀に参列する場合、配偶者の立場や家族間での役割分担も考慮する必要があります。配偶者が喪主を務める場合や、葬儀の準備に深く関わる場合は、上司に相談して追加の配慮を求めることも可能です。

喪主を務める場合の特別配慮

喪主を務める場合は通常の忌引き休暇よりも多くの日数が必要となるため、特別な配慮について詳しく説明します。

喪主の責任と必要な準備期間

喪主を務める場合、葬儀全体の責任者として多くの決定と準備を行う必要があります。葬儀社の選定、式の形式決定、参列者への連絡、弔辞の依頼、返礼品の選定など、通常の参列者とは比較にならない負担があります。

喪主としての準備には、通夜の前日から葬儀後の整理まで含めて、最低でも1週間程度は必要とされています。特に、初めて喪主を務める場合は、慣れない手続きに時間がかかることも多くなります。

喪主を務めることを会社に伝えることで、通常の忌引き日数から3〜5日程度の延長が認められる場合があります。

葬儀後の対応業務

葬儀が終了した後も、喪主には多くの対応業務が残ります。弔問客への対応、香典返しの手配、四十九日法要の準備、相続関連の手続きなど、継続的な対応が必要です。

特に、葬儀直後は弔問客が自宅を訪れることが多く、ある程度の期間は在宅しての対応が必要になります。また、葬儀費用の精算や各種手続きの完了にも時間を要します。

これらの業務負担を考慮して、会社によっては喪主の場合の特別休暇制度を設けているところもあります。制度がない場合でも、有給休暇との併用や段階的な復帰について相談することが可能です。

職場復帰に向けた段階的調整

喪主として多忙な期間を過ごした後の職場復帰は、心身両面で負担が大きいものです。可能であれば、時短勤務や在宅勤務を組み合わせた段階的な復帰を検討しましょう。

復帰初日は半日勤務とし、徐々に通常勤務に戻していく方法や、重要な会議や出張は当面控えるなどの配慮を上司に相談することも重要です。周囲の理解と協力を得ながら、無理のない復帰を心がけましょう。

就業規則と会社規定の確認方法

忌引き休暇の詳細は会社ごとに異なるため、自社の就業規則や社内規定を正確に把握することが重要です。

就業規則での忌引き規定の見つけ方

忌引き休暇に関する規定は、就業規則の「休暇」または「慶弔休暇」の章に記載されていることが一般的です。会社によっては「特別休暇」として分類されている場合もあります。

就業規則は従業員が閲覧できる場所に常時備え置かれている必要があります。人事部門、総務部門、または社内イントラネットで確認することができます。入社時に配布された就業規則のコピーがある場合も、最新版との相違がないか確認することが重要です。

規定を確認する際は、対象となる続柄、日数、有給・無給の別、必要な手続きについて詳しく読み込みましょう。不明な点があれば人事担当者に質問することをおすすめします。

会社規定と法的基準の違い

忌引き休暇は労働基準法で義務付けられた制度ではないため、会社によって内容に大きな差があります。全く忌引き休暇制度がない会社もあれば、非常に手厚い制度を設けている会社もあります。

法的な義務がないため、忌引き休暇の日数や対象範囲は完全に会社の裁量となります。ただし、就業規則で定められた内容は労使間の契約として法的拘束力を持つため、会社は規定に従って休暇を付与する義務があります。

自社の制度が他社と比較して不十分だと感じる場合でも、まずは現在の規定を正確に理解し、その範囲内で最大限活用することが重要です。

規定変更や特例申請の可能性

会社の忌引き規定に該当しない特殊なケースでは、個別の相談により特例的な対応が認められる場合があります。例えば、育ての親のような関係だった親族や、同居していた親族などです。

特例申請を行う場合は、その必要性と妥当性を客観的に説明できる資料を準備することが重要です。また、前例がない場合でも、人道的な観点から配慮が検討される場合があります。

規定の変更や改善を求める場合は、労働組合がある会社では組合を通じて要望を伝えることも可能です。個人での要望よりも、組織的な要望の方が検討される可能性が高くなります。

学校・教育機関での忌引き取扱い

学校や教育機関における忌引き休暇の取扱いについて、児童・生徒・学生および教職員それぞれの立場から解説します。

小中高校での忌引き日数

公立の小中高校では、文部科学省の指針や各都道府県教育委員会の規定に基づいて忌引き日数が設定されています。一般的には企業と同様の日数設定となることが多く、配偶者10日、父母7日、子5日、祖父母・兄弟姉妹3日程度が相場です。

私立学校の場合は各学校の規定によりますが、公立学校に準じた設定となることが一般的です。忌引き期間中は欠席扱いとならず、出席すべき日数から除外されるため、進級や卒業の出席日数に影響しません。

中学・高校では定期試験期間中の忌引きについて、追試験や別日程での受験が認められます。大学受験を控えた高校3年生の場合は、特別な配慮が検討される場合もあります。

大学・専門学校での対応

大学や専門学校では、各機関が独自に忌引き制度を設けています。単位制のため、忌引き期間中の授業について補講や課題提出による対応が一般的です。

ゼミや実習、実験科目など出席が重視される科目については、担当教員と個別に相談して対応方法を決めることになります。卒業論文の提出期限や就職活動との兼ね合いがある場合は、学生課や就職課との相談も重要です。

大学院生の場合は、研究活動への影響も考慮して、指導教員と密に連絡を取りながら対応することが必要です。学会発表や論文投稿のスケジュールがある場合は、必要に応じて延期を検討しましょう。

教職員の場合の特別事情

教職員が忌引き休暇を取得する場合、児童・生徒・学生への授業影響を最小限に抑える必要があります。代替教員の手配や授業内容の調整など、学校全体での対応が必要になります。

特に、担任を持つ教員や部活動の顧問の場合は、学級運営や部活動指導への影響も考慮する必要があります。同僚教員との連携や保護者への説明なども重要な要素となります。

学校行事や入試業務、成績処理の時期と重なった場合は、業務の優先順位について管理職と相談し、必要に応じて業務分担の調整を行います。

忌引き休暇の社会的マナーと注意点

忌引き休暇を取得する際に守るべき社会的マナーと、トラブルを避けるための注意点について説明します。

職場復帰時の挨拶とお礼

忌引き休暇から職場に復帰する際は、お世話になった上司や同僚への挨拶と感謝の気持ちを伝えることが重要です。特に、業務を代行してくれた同僚や、急な休暇に理解を示してくれた上司には、個別にお礼を述べましょう。

お礼の方法は口頭での挨拶が基本ですが、チーム全体への感謝を示すために簡単な菓子折りを持参することもあります。ただし、あまり高価なものは避け、心からの感謝の気持ちを素直に表現することが最も重要です。

復帰初日は業務に集中する前に、関係者への挨拶を済ませることから始めましょう。メールでの一斉挨拶も併用すると、より丁寧な印象を与えることができます。

休暇中の連絡頻度と方法

忌引き休暇中であっても、重要な業務連絡については適度な頻度で確認することが望ましいとされています。ただし、葬儀当日や通夜の最中など、完全に業務から離れるべき時間もあることを理解してもらいましょう。

連絡方法は基本的にメールとし、緊急時のみ電話連絡を受けるという取り決めを事前に行っておくことが重要です。休暇の延長が必要になった場合や、予定より早く復帰できる場合は、速やかに連絡しましょう。

クライアントとの約束がある場合は、事情を説明して理解を求めることも必要です。多くの場合、訃報という特別な事情については理解を示してもらえますが、事前の連絡と誠実な対応が不可欠です。

プライバシーへの配慮

忌引き休暇の理由や詳細について、職場の同僚から質問を受けることがありますが、答えたくない内容については無理に詳しく説明する必要はありません。「身内に不幸があり」程度の説明で十分です。

逆に、同僚が忌引き休暇を取得した場合は、詳しい事情を詮索したり、過度に気を遣いすぎたりしないよう注意しましょう。適度な距離感を保ちながら、必要なサポートを提供することが重要です。

SNSでの発信についても注意が必要です。葬儀の様子や個人的な感情を職場の人が見ることができる状態で投稿することは、後々のトラブルの原因となる可能性があります。

まとめ

忌引き休暇は、大切な人を亡くした際の葬儀参列や各種手続きのために設けられた重要な制度です。続柄によって日数が異なり、適切な手続きと社会的マナーを守ることで、円滑に取得することができます。

忌引き日数は続柄によって決まり、配偶者10日、実父母7日、子5日、祖父母・兄弟姉妹3日が一般的な相場
会社への連絡は可能な限り速やかに行い、必要な証明書類を準備することが重要
忌引き期間中は葬儀参列だけでなく、各種手続きや遺族としての対応に時間を要する
喪主を務める場合や遠方での葬儀の場合は、追加の配慮を相談することが可能
自社の就業規則を事前に確認し、規定内容を正確に把握することが大切
職場復帰時には関係者への挨拶と感謝の気持ちを伝えることが社会的マナー

突然の訃報に直面した際には、まず自社の就業規則を確認し、上司に速やかに連絡を取りましょう。不明な点があれば人事担当者に相談し、必要な手続きを確実に行うことで、故人を偲ぶ時間を大切に過ごすことができます。