喪中に厄払いはしていい？マナーとお礼参りの流れを解説

大切な方を亡くした喪中期間中に、自分の厄年を迎えてしまったら…。「厄払いをしても良いのだろうか」「神社に行くのはマナー違反？」と悩む方は少なくありません。この記事では、喪中期間中の厄払いについての考え方や、適切な対応方法を詳しく解説します。喪中と厄払いの両立に悩んでいる方、厄払いの適切な時期やマナーを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

喪中と厄払いの基本的な考え方

喪中期間中の厄払いについて考える前に、まずは喪中と厄払いそれぞれの意味を理解しておきましょう。

喪中とは何か - 忌中との違い

喪中とは、身内の方が亡くなってから一定期間、故人を追悼する期間のことです。一般的に忌明け（四十九日）から1年間を指します。この間は年賀状の交換を控えたり、華やかな行事への参加を自粛したりするのが一般的です。

一方、忌中は亡くなった直後から四十九日までの期間を指します。仏教では、故人の魂がこの期間に裁きを受けるとされており、特に厳粛に過ごすべき期間とされています。

区分	意味	期間	宗教的意味
忌中	穢れを避ける期間	四十九日間（一般的）	死者の魂が裁きを受ける時間（仏教）
喪中	哀悼の期間	忌明けから1年間	故人の冥福を祈る期間

厄年と厄払いの基本知識

厄年とは、人生の中で特に災いが起こりやすいとされる年齢のことです。男性は25歳、42歳（大厄）、61歳、女性は19歳、33歳（大厄）、37歳、61歳が厄年とされています。

厄年は通常、前厄・本厄・後厄の3年間で構成されており、特に本厄の年に厄払いを行う方が多いでしょう。厄払いとは、この時期に起こりやすいとされる災厄を避けるための神事で、「大難を小難に、小難を無難にする」ことを願って行われます。

厄払いの時期は、伝統的には1月1日から節分（2月3日）までが最も良いとされていますが、現代では通年で祈祷を受け付けている神社も多くなっています。

厄除けと厄払いの違い

似た言葉に「厄除け」がありますが、これは厄払いとは異なります。

用語	実施場所	目的	形式
厄除け	寺院	災いの予防	護摩祈願
厄払い	神社	降りかかった災厄の除去	お祓い（祓詞、大麻）

寺院で行われる厄除けは仏教的な儀式で、神社で行われる厄払いは神道の儀式です。この違いは、喪中の対応を考える上で重要なポイントとなります。

喪中期間中の厄払いは行っても大丈夫？

喪中期間中の厄払いについては、宗教的な観点から考えることが大切です。神道と仏教では考え方が異なるため、それぞれの視点から見ていきましょう。

神道における「穢れ（けがれ）」の考え方

神道では、死を「穢れ（けがれ）」と考える思想があります。これは死を不浄なものとして捉えるのではなく、「正常ではない状態」と見なす考え方です。また「気枯れ」とも表現され、精神的な気力が低下した状態を指します。

この考え方に基づくと、忌中（四十九日以内）は神社での厄払いを避けるべきとされています。神様に対して失礼になるとの考えからです。

ただし、忌明け後（五十日目以降）は神社での厄払いが可能とされています。つまり、一般的な喪中期間中でも、忌明け後であれば厄払いを受けることができます。

仏教における厄除けの考え方

一方、仏教では死を穢れとは考えません。そのため、寺院での厄除けは喪中・忌中を問わず実施可能です。

仏教の儀式である厄除けは、故人の冥福を祈りながら自身の厄を払うという意味合いもあり、むしろ積極的に行うことが推奨される場合もあります。

このように、神道と仏教では考え方が大きく異なるため、自分の宗教的背景や考え方に合わせて選択することが大切です。

現代の考え方と対応策

現代では、伝統的な考え方を尊重しつつも、より柔軟な対応をする傾向があります。例えば、以下のような対応策が考えられます。

忌中（四十九日以内）は厄払いを避け、忌明け後に行う
神社ではなく寺院で厄除けを行う
どうしても必要な場合は、神社に相談して対応を仰ぐ

特に最近では、リモート祈祷や代理祈祷を行う神社も増えているため、直接参拝せずに厄払いを受けることも可能になっています。

厄払いを受ける際のマナーと流れ

厄払いを受ける際には、いくつかのマナーや手順があります。喪中期間中に厄払いを受ける場合も、基本的なマナーは同じです。

厄払いの服装とマナー

厄払いを受ける際の服装は、特に厳格な決まりはありません。礼服は不要で、清潔感のある服装であれば問題ありません。

男性：スーツやジャケットなど
女性：落ち着いた色のワンピースなど

ただし、神社によっては素足になる必要がある場合もあるため、サンダルなどの開放的な靴は避けるのが無難です。また、神社参拝にふさわしくない露出の多い服装も控えましょう。

初穂料（謝礼金）の相場と渡し方

厄払いを受ける際には、初穂料（謝礼金）を納めるのが一般的です。相場は5,000〜10,000円程度で、神社によって異なります。

初穂料を包む際には以下の点に注意しましょう。

4や9を含む金額は避ける（縁起が悪いとされるため）
表書きは「初穂料」「玉串料」「御礼」などと書く
のし袋の場合、表書きの下に氏名を縦書きで記入
白封筒の場合、表面中央に「御初穂料」、その下に氏名を記載

初穂料は直接手渡しではなく、受付や祈祷の際に指示された場所に納めるのが礼儀です。

厄払いの流れと所要時間

厄払いの一般的な流れは以下の通りです。

神社の受付で申し込み（予約が必要な場合もあります）
初穂料を納める
待合室などで待機
神職の案内で拝殿へ移動
祈祷（15〜30分程度）
お神酒や塩などをいただく（神社による）
お守りや大麻（おおぬさ）を受け取る

所要時間は神社によって異なりますが、受付から終了まで30分〜1時間程度を見ておくと良いでしょう。混雑する初詣シーズンやお盆の時期は、さらに時間がかかる場合があります。

代理での厄払いは可能？喪中の人の選択肢

喪中で神社参拝を避けたい場合や、何らかの理由で自分で厄払いを受けられない場合、代理での厄払いが可能かどうか気になる方も多いでしょう。ここでは代理厄払いの可否と方法について解説します。

代理厄払いの可否と方法

多くの神社では、本人の氏名・生年月日を伝えれば、代理人による祈祷も可能としています。ただし、神社によってはポリシーが異なるため、事前に電話などで確認することをおすすめします。

代理で厄払いを依頼する場合は、以下の情報を代理人に伝えておきましょう。

本人の氏名（フルネーム）
生年月日
住所
希望する祈祷内容（厄払い）

また、初穂料や必要書類なども準備しておくと、代理人の負担が軽減されます。

リモート祈祷という選択肢

近年では、コロナ禍の影響もあり、リモート祈祷を提供する神社も増えています。郵送やオンラインで申し込みを行い、祈祷の様子をライブ配信で見られるサービスや、祈祷後にお守りなどを郵送してもらえるサービスなどがあります。

リモート祈祷のメリットは、直接神社に足を運ばなくても良いことで、喪中の方や遠方に住んでいる方にとっては便利な選択肢です。ただし、すべての神社でこのサービスを提供しているわけではないため、事前に確認が必要です。

寺院での厄除けという選択肢

前述したように、仏教では死を穢れとは考えないため、寺院での厄除けは喪中でも問題なく行える場合が多いです。神社での厄払いを避けたい方は、寺院での厄除けを検討してみるのも一つの方法です。

寺院での厄除けは、護摩祈願や読経などの形で行われ、厄年の災いから守られるよう祈願します。お布施の相場は神社の初穂料と同程度で、5,000〜10,000円程度が一般的です。

喪中に厄払いをしてしまった場合の対応

もし知らずに喪中期間中に神社で厄払いをしてしまった場合、どのように対応すべきでしょうか。

神社での対応と考え方

喪中に神社参拝をしてしまった場合、まず慌てないことが大切です。神道における「穢れ」の考え方は、物理的な汚れというよりも、精神的な「気枯れ」の状態を指すことが多いです。

もし心配であれば、以下のような対応を検討しましょう。

参拝した神社に相談し、必要に応じてお祓いを受ける
気持ちを整理し、故人への敬意を忘れない
自分の信仰に従って対応する

神社によっては「お祓い」を受けることで穢れを清めることができるとされています。不安な場合は、神社の神職に相談してみることをおすすめします。

仏教の考え方からの対応

仏教の観点からは、死は自然の摂理であり、穢れとは考えないため、特別な対応は必要ないとされることが多いです。ただし、宗派によって考え方が異なる場合もあるため、菩提寺やお寺の住職に相談することも一つの方法です。

大切なのは、自分の心が安らかであることです。故人を敬い、冥福を祈る気持ちがあれば、形式にとらわれすぎる必要はないという考え方もあります。

家族や親族への配慮

喪中に厄払いを受けたことで、家族や親族に不安や心配を与えてしまう可能性もあります。特に高齢の方や伝統的な考え方を持つ方は、喪中の神社参拝に抵抗感を持つかもしれません。

そのような場合は、なぜ厄払いを受けたのか、どのような配慮をしたのかを丁寧に説明し、理解を求めることが大切です。必要に応じて、家族全員でお祓いを受けるなどの対応も検討しましょう。

厄払い後のお礼参りの流れとマナー

厄払いを受けた後は、無事に厄年を過ごせたことへの感謝を表す「お礼参り」を行うことが推奨されています。ここでは、お礼参りの意義や流れ、マナーについて解説します。

お礼参りの意義とタイミング

お礼参りとは、厄年を無事に過ごせたことへの報告と感謝の儀式です。神様に守られたことへの謝意を表すもので、厄年の締めくくりとして重要な意味を持ちます。

お礼参りのタイミングは、本厄の年が終わる時期（12月頃）や、後厄が終わる時期が一般的です。特に大晦日や年始に行うことで、新年を清々しい気持ちで迎えられるというメリットもあります。

ただし、厳密な期限があるわけではないので、自分の都合の良いタイミングで行っても問題ありません。大切なのは、感謝の気持ちを持って参拝することです。

お礼参りの服装と初穂料

お礼参りの服装は、厄払いを受けた時と同様に、清潔感のある服装が適しています。特別な正装は必要なく、日常的なきちんとした服装で構いません。

初穂料（お礼の気持ち）の相場も厄払い時と同程度で、5,000円前後が一般的です。表書きは「御礼」や「感謝」などが適当でしょう。

初穂料の包み方や渡し方も、厄払い時と同様のマナーで行います。神社によっては、専用の初穂料袋が用意されている場合もありますので、受付で確認するとよいでしょう。

お礼参りの流れとポイント

お礼参りの基本的な流れは以下の通りです。

神社の受付で「お礼参り」の旨を伝える
初穂料を納める
通常の参拝作法で参拝する（二礼二拍手一礼）
感謝の気持ちを伝える
必要に応じて神職からのお祓いを受ける

お礼参りのポイントは、感謝の気持ちを言葉で表すことです。参拝の際に「厄年を無事に過ごせたことに感謝します」などと心の中で唱えると良いでしょう。

また、お礼参りが難しい場合は、代理の人に依頼したり、神社への感謝状送付などの方法もあります。どうしても行けない場合は、自宅で感謝の気持ちを持って手を合わせるだけでも意味があるとされています。

喪中期間中の神社参拝に関するQ&A

喪中期間中の神社参拝や厄払いについて、よくある質問とその回答をまとめました。疑問点の解消にお役立てください。

喪中でもお守りを購入するだけなら問題ない？

神社でのお守り購入は、基本的には鳥居をくぐって境内に入ることになるため、伝統的な考え方では避けるべきとされています。しかし、現代ではお守り授与所が鳥居の外にある神社も多いため、そういった場所でのお守り購入であれば問題ないとされることが多いです。

どうしてもお守りが必要な場合は、神社に電話で相談するか、代理の方に購入を依頼する方法もあります。また、一部の神社ではオンラインでのお守り授与も行っていますので、そちらを利用するのも一つの方法です。

忌明け後の喪中期間は神社参拝しても大丈夫？

忌明け（四十九日法要）後の喪中期間は、神社参拝や厄払いを受けることが可能とされることが多いです。これは、忌中（四十九日以内）の方が宗教的な制約が厳しいためです。

ただし、神社や地域によって考え方が異なる場合もありますので、不安な場合は参拝したい神社に事前に相談することをおすすめします。神職の方から適切なアドバイスがもらえるでしょう。

厄年を過ぎてから厄払いをしても効果はある？

厄払いは本来、厄年が始まる前か、厄年の早い時期に行うのが一般的です。しかし、何らかの理由で厄年中に厄払いができなかった場合でも、厄年を過ぎてから行うことは可能です。

厄払いの効果は、神様の加護を得るという精神的な安心感にもありますので、時期が過ぎていても意味がないということはありません。大切なのは、自分の気持ちを整理し、神様に対する敬意と感謝の気持ちを持って参拝することです。

また、厄年が過ぎた後でも「厄落とし」や「厄祓い」として、同様の祈祷を受けられる神社も多いです。

まとめ

この記事では、喪中期間中の厄払いについて、その可否やマナー、お礼参りの流れなどを詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。

忌中（四十九日以内）は神社での厄払いを避け、忌明け後に行うのが望ましい
寺院での厄除けは喪中・忌中を問わず実施可能なケースが多い
代理での厄払いやリモート祈祷という選択肢もある
厄払いを受ける際は、清潔感のある服装で、適切な初穂料を用意する
厄年を無事に過ごせたら、お礼参りで感謝の気持ちを伝えることが大切

喪中と厄年が重なった場合は、各宗教の考え方を理解した上で、自分の信仰や家族の意向に合わせて判断することが大切です。不安な場合は、神社や寺院に相談してみることをおすすめします。厄払いは心の安心を得るための儀式でもありますので、自分の心が落ち着く方法を選んでください。